【2024年版】焼肉チェーンの店舗数ランキング
2024年10月7日 | 業界・地域分析
このところ米国産牛肉の国内卸値が、輸入自由化(1991年~)以降の最高水準にまで高騰している焼肉業界。ここ1年の店舗数はどのように動いているのでしょうか。
今回は、当社のチェーン店データを元に、焼肉チェーンの1年間(2023年7月~2024年7月)の店舗数推移やチェーン別ランキング、前年比増減状況などを集計しました。
また、ランキング上位30チェーンの海外への出店動向も調べてみました。
データの集計方法について
- 集計元のチェーン店データは、チェーン店の公開情報を当社が調査・収集したものです。すべてのチェーン店を網羅したものではありません。また、実態とは異なる場合がありますのでご了承ください。
- 2024年7月時点で、国内に10店舗以上展開しているチェーン店を集計の対象にしています。
- 当社のチェーン店データ調査・収集は毎月を基本としていますが、隔月など定期収集のチェーンもあります。表・グラフの対象月に収集がなかったチェーンの場合、当月時点で最新のデータを記載しています。
- 店舗数の増減率(%)は、2024年7月と2023年7月の対比で算出しています(小数点2位以下は四捨五入)。
目次
- 【月別推移】焼肉チェーン 店舗数(全体、2023年7月~2024年7月)
- 【2024年版】焼肉チェーン 店舗数ランキング(上位30)
- 【海外出店動向】まとまった数を展開しているのは、最大手のみ
- 【まとめ】順風が止み、食肉価格の高騰が影を落とす
【月別推移】焼肉チェーン 店舗数(全体、2023年7月~2024年7月)
↓2.2% ここ3年は、増加 → 横ばい → 減少 と推移
焼肉チェーン全体の店舗数推移(2023年7月~2024年7月)をみると、前月に比べて減った月が多く、1年間で65店減少しています。この結果、2024年7月と2023年7月を比較した前年比では 2.2%減となりました。
当社の集計を遡ると、2022年版では約3.5%の対前年増加率をみせていたものの、2023年版で0.03%増のほぼ横ばい、そして今回(2024年版)は2.2%の減少。増加する前の2021年(2,876店)の水準に戻った形となっています。
店舗数の前年同月比増減率
業種 | 2023年7月 | 2024年7月 | 増減率(%) |
---|---|---|---|
焼肉チェーン | 2,930 | 2,865 | -2.2 |
【2024年版】焼肉チェーン 店舗数ランキング
2024年版で起こった「変調」とは・・・
チェーン別店舗数ランキングを7月の前年同月比でみると、30チェーンのうち 増加が11で減少が14、プラスマイナスゼロは5チェーンとなっています。
増加率が最も高いのはランキング22位の「牛角食べ放題専門店(52.2%・12店増)」。牛角本体は近年減少傾向にあることから、運営会社が別業態を拡充している様子がうかがえます。
すかいらーくグループのトマト&アソシエイツが運営する「じゅうじゅうカルビ(12.8%・5店増)」も、手堅く店舗を増やしています。
一方、ランキング上位では、2位の「焼肉きんぐ(6.2%・19店増)」以外は、「牛角(8.9%・51店減)」「安楽亭(7.8%・12店減)」「牛繁(7.4%・11店減)」など、軒並み減少しています。
また、2024年版の大きな変化として挙げられるのは「ときわ亭」と「焼肉ライク」の変調です。両チェーンとも、2022年版で躍進し、2023年版でも高い増加率をみせていたものの、今回はそれぞれ10.1%減(11店減)、10.6%減(10店減)と、一気に減少に転じています。
チェーン別店舗数ランキング(上位30チェーン)
順位 | チェーン名 | 2023年7月 | 2024年7月 | 増減率(%) |
---|---|---|---|---|
1位 | 牛角 | 571 | 520 | -8.9 |
2位 | 焼肉きんぐ | 306 | 325 | +6.2 |
3位 | 七輪焼肉安安 | 163 | 161 | -1.2 |
4位 | 安楽亭 | 153 | 141 | -7.8 |
5位 | 牛繁 | 148 | 137 | -7.4 |
6位 | ときわ亭 | 109 | 98 | -10.1 |
7位 | あみやき亭 | 98 | 96 | -2.0 |
8位 | 熟成焼肉いちばん | 86 | 92 | +7.0 |
9位 | ワンカルビ | 89 | 89 | 0 |
10位 | 焼肉ライク | 94 | 84 | -10.6 |
11位 | 大阪焼肉・ホルモン ふたご | 79 | 83 | +5.1 |
12位 | カルビ丼とスン豆腐専門店 韓丼 | 70 | 72 | +2.9 |
13位 | 情熱ホルモン | 71 | 63 | -11.3 |
14位 | 叙々苑 | 60 | 60 | 0 |
15位 | 焼肉トラジ | 58 | 59 | +1.7 |
15位 | カルビ大将 | 57 | 59 | +3.5 |
17位 | 焼肉なべしま | 54 | 55 | +1.9 |
18位 | 肉匠坂井 | 50 | 49 | -2.0 |
19位 | じゅうじゅうカルビ | 39 | 44 | +12.8 |
20位 | やまなか家 | 40 | 40 | 0 |
21位 | 炭火焼肉屋さかい | 35 | 37 | +5.7 |
22位 | 牛角食べ放題専門店 | 23 | 35 | +52.2 |
23位 | 焼肉五苑 | 37 | 34 | -8.1 |
23位 | くいどん | 31 | 34 | +9.7 |
25位 | 焼肉の牛太 | 30 | 29 | -3.3 |
26位 | カルビ屋 大福 | 31 | 28 | -9.7 |
27位 | 焼肉ぐりぐり家 | 25 | 25 | 0 |
27位 | 味ん味ん | 25 | 25 | 0 |
27位 | しちりん | 26 | 25 | -3.8 |
30位 | 焼肉の和民 | 25 | 24 | -4.0 |
ランキングは当社のチェーン店舗データをもとに作成しています
日本ソフト販売が提供する、全国のチェーン店舗データ(飲食店・コンビニ・ドラッグストアなど)についての詳しいサービス情報は、こちらからご覧いただけます。
【海外出店動向】まとまった数を展開しているのは、最大手のみ
外食チェーン全般に、このところ海外出店を加速させたり、新たに海外進出を図る動きが目立っています。そこで焼肉チェーンについても、当社国内店舗数ランキング上位30チェーン(ブランド)における、現在(2024年9月)の海外出店動向を調べてみました。
焼肉チェーンで最も海外店舗が多いのは最大手「牛角(約190店舗)」で、2番目の「焼肉ライク(約37店舗)」からは一挙に数が少なくなり、「牛繁」が16店舗でこれに続いています(※)。これら以外に3チェーンの海外出店が確認できたものの、出店数は今のところ2~3店に止まっています。
※海外出店数の詳細は、下記の【表】海外展開がある焼肉チェーン、をご覧ください。
結論としては、焼肉は全般的に海外展開が少ない業種と言えそうです。これまで海外出店動向調べた外食業種(ラーメン・ファミリーレストラン・寿司・焼肉)の中では、海外進出チェーンの数こそファミリーレストランが最も少なかったものの、全体の出店数が最も少ないのは焼肉です。
【表】海外展開がある焼肉チェーン(※)
※対象:当社の店舗数ランキング(国内)上位30チェーン。
※各社ホームページに掲載されている情報より、確認可能な店舗数を調査・カウントしました。
チェーン名 | 海外店舗数(店) | 説 明 |
---|---|---|
牛角 | 約190店 | 2024年9月現在。ホームページの「世界の牛角」より。「Gyu-kaku Jinan-Bou」「Gyu-kaku Buffet」を含む。アメリカ合衆国を中心に、インドネシア、中国、台湾、シンガポール等。 運営会社:株式会社レインズインターナショナル(コロワイドグループ) |
焼肉ライク | 約37店 | 2024年9月現在。株式会社ダイニングイノベーション・ホームページの Globalより(Global - China - 焼肉ライク - Location など)。インドネシア、台湾、香港、シンガポール等。 運営会社:株式会社焼肉ライク |
牛繁 | 16店 | 2024年9月現在。ホームページの店舗一覧より。ベトナム、香港、アメリカ合衆国、インドネシア。 運営会社:株式会社牛繁ドリームシステム |
大阪焼肉・ホルモン ふたご | 3店 | 2024年9月現在。ホームページの店舗情報-海外より。香港、アメリカ合衆国。 運営会社:株式会社FTG Company |
安楽亭 | 2店 | 2024年9月現在。直営子会社・安楽亭ベトナムホームページの店舗紹介より。ベトナム・ホーチミン市に2店。 運営会社:株式会社安楽亭 |
焼肉トラジ | 2店 | ホームページ - イベント情報の2024.1.25に「ニューヨークに2店舗目がオープン」の告知あり。 運営会社:トラジ |
【まとめ】順風が止み、食肉価格の高騰が影を落とす
焼肉チェーン運営各社(※)の、2024年に公開された業績発表(四半期報告・決算短信・月次売上高前期比)を調べたところ、1社のみ売上高・利益ともに前年同期比で大幅増の運営会社(株式会社あみやき亭)が確認できたものの、そのほかでは「増収減益」であったり、逆に「減収増益」であったり。また、2024年3月期決算では売上高が増加したものの、2025年3月期の第1四半期に入ると減少していたり、と 会社ごとに状況が異なっています。
※対象:当社の店舗数ランキング上位30チェーンのうち、運営会社の業績資料が公開されている6社。
原材料価格・光熱費・人件費・物流費と、コスト押し上げ要因が重なる厳しい環境下に置かれているという点では、焼肉チェーンもほかの飲食業種と同様です。ただ、焼肉が特に厳しいのは、円安や米国産牛肉の生産減少などの要因から食肉価格が高騰し、収益を圧迫する状況が続いているためです。ほかの飲食店に比べて原価率が高めであるといわれるだけに、経営への影響も大きいというわけです。
コロナ禍では外食における焼肉への需要が高まり、「勝ち組」とみられていた焼肉チェーン。当社集計によるチェーン全体の店舗数をみても、2022年には3.5%増加し、出店への積極姿勢が目立っていました。
しかし、コロナ禍の順風が止んだ最近(2023~2024年)では、ここ数年高速出店を続けていたチェーンにさえも急ブレーキがかかっている状態です。「消費者の節約志向の高まり」による客離れ懸念からか、ほかの飲食大手のように明確な「値上げ」を打ち出しているチェーンは少なく、そんなところにも焼肉業界が置かれた収益環境の厳しさが察せられます。
とはいえ、厳しい環境の中でも前年同期比で売り上げが増えているところもあれば、収益を上げているところもあります。今後はどんな規模のどんな特徴の焼肉チェーンが成長していくのか、為替や食肉価格の動向も含めて注視していきたいところです。
本記事は当社のチェーン店舗データをもとに作成しています
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