【2024年版】牛丼チェーンの店舗数ランキング
2024年10月21日 | 業界・地域分析
国内で1,000~2,000店舗を展開する3社に集約されている牛丼チェーン。昨今の店舗数はどのような動きをみせているのでしょうか。
今回は、当社のチェーン店データを元に、牛丼チェーンの1年間(2023年7月~2024年7月)の店舗数推移やチェーン別ランキング、前年同月比増減状況などを集計しました。
また、海外への出店動向も調べてみました。
データの集計方法について
- 集計元のチェーン店データは、チェーン店の公開情報を当社が調査・収集したものです。すべてのチェーン店を網羅したものではありません。また、実態とは異なる場合がありますのでご了承ください。
- 2024年7月時点で、国内に10店舗以上展開しているチェーン店を集計の対象にしています。
- 当社のチェーン店データ調査・収集は毎月を基本としていますが、隔月など定期収集のチェーンもあります。表・グラフの対象月に収集がなかったチェーンの場合、当月時点で最新のデータを記載しています。
- 店舗数の増減率(%)は、2024年7月と2023年7月の対比で算出しています(小数点2位以下は四捨五入)。
目次
- 【月別推移】牛丼チェーン 店舗数推移(全体、2023年7月~2024年7月)
- 【2024年版】牛丼チェーン 店舗数ランキング(上位30)
- 【海外出店動向】最多は半世紀前から海外展開しているあのチェーン
- 【まとめ】コロナ禍前を上回る売り上げで好調な牛丼業界だが・・・
【月別推移】牛丼チェーン 店舗数(全体、2023年7月~2024年7月)
↑2.0% 微増から着実な増加へ
全体(3チェーン計)の国内店舗数(2023年7月~2024年7月)をみると、2024年2月以外は前月より増加して推移しており、年間で 2.0%(83店舗)の増加となっています。
2022年版(0.88%増、※1)、2023年版(0.58%増)と微増が続いていたものの、今回は2.0%と着実に増加。以前に当社が公開した2024年版の飲食業種(※2)の店舗数では、国内店舗数の減少・頭打ちが目立っていましたが、その中で牛丼業界は高い増加率となっています。
※1 2022年版は「なか卯」の店舗数も含む4チェーンの集計(調査時に牛丼がメニューにあったため)。
※2 ハンバーガー、宅配ピザ、ラーメン、ファミリーレストラン、寿司、焼肉
店舗数の前年同月比増減率
業種 | 2023年7月 | 2024年7月 | 増減率(%) |
---|---|---|---|
牛丼チェーン | 4,141 | 4,224 | +2.0 |
【2024年版】牛丼チェーン 店舗数ランキング
3年連続増加率トップのチェーンは・・・
チェーン別店舗数ランキングを7月の前年同月比でみると、ランキング1位の「すき家」は 0.6%・12店の微増で、2位「吉野家」が2.3%・28店増。最も増加したのは3位の「松屋(4.3%・43店増)」という結果になっています。
3チェーンのここ3年(2022年→2023年→2024年)の増加率の推移をみても、すき家は 0.3%増→0.05%減→0.6%増、吉野家では 0.7%増→0.7%増→2.3%増、松屋が 3.1%増→1.7%増→4.3%増、となっており、松屋の増勢が目立っています。
チェーン別店舗数ランキング(上位30チェーン)
順位 | チェーン名 | 2023年7月 | 2024年7月 | 増減率(%) |
---|---|---|---|---|
1位 | すき家 | 1,941 | 1,953 | +0.6 |
2位 | 吉野家(※1) | 1,197 | 1,225 | +2.3 |
3位 | 松屋(※2) | 1,003 | 1,046 | +4.3 |
※1 吉の字は、正しくは「土(つち)」に「口(くち)」と書きます。
※2 松屋は、「牛丼」ではなく「牛めし」の呼び名で統一しています。
ランキングは当社のチェーン店舗データをもとに作成しています
日本ソフト販売が提供する、全国のチェーン店舗データ(飲食店・コンビニ・ドラッグストアなど)についての詳しいサービス情報は、こちらからご覧いただけます。
【海外出店動向】最多は半世紀前から海外展開しているあのチェーン
チェーン展開しているのは3大手のみ、というほかの飲食業種ではみられない特殊な環境にある牛丼業界ですが、それぞれの海外出店動向はどうなっているのでしょうか。現在(2024年10月)の状況を探ってみました。
最も海外店舗数が多いのは「吉野家」で、中国やインドネシア、米国など11の国と地域で計986店(2024年8月現在)を展開しています。
同社の海外展開の始まりは、米国で牛肉を直接買い付けるために「USA吉野家」を設立した1973年。翌年 日本政府が牛肉輸入を禁止したため、1975年、窮余の策としてデンバーに牛丼店(牛丼を「Beef Bowl」と命名)をオープンしたのが海外初出店となりました。
その後、1987年に台湾で合弁会社を設立、1992年には北京1号店を出店し、中国全土、フィリピン、インドネシア、タイ、シンガポールなどのアジア各国に展開を拡げています。
[吉野家ホールディングス(HD) ホームページ「海外展開の歴史」より]
業界最大手の「すき家」は、中国や東南アジア、中南米で 669店舗を展開しています(2024年6月末現在)。2008年の上海が海外1号店で、中国全土、ブラジル、タイ、マレーシア、メキシコ、台湾、インドネシア、ベトナム、と展開を拡大してきました。
近年国内店舗数を増やしている「松屋」ですが、海外は今のところ14店(2024年10月現在)に止まっています。海外直営1号店は、2009年の中国・上海市。運営会社の松屋フーズでは、2014年からとんかつの「松乃家」を中国で展開し、「松屋」は台湾中心の展開となっています。最近(2024年)香港とモンゴルに相次いで「松屋」を出店と、新規開拓への積極姿勢がうかがえます。
【表】牛丼チェーン3社の海外店舗数(※)
※各社ホームページ および 決算報告資料に掲載されている情報のみを参考に作成しました。
チェーン名 | 海外店舗数(店) | 説 明 |
---|---|---|
吉野家 | 986 | 2024年8月現在。吉野家ホームページの会社概要 - 店舗数[国内・海外]より)。米国、中国、台湾、香港、モンゴル、シンガポール、フィリピン、インドネシア、タイ、カンボジア、ベトナム。 |
すき家 | 669 | 2024年6月末現在。ゼンショーHD 2025年3月期第1四半期決算短信より「グローバルすき家」の海外店舗数。中国、ブラジル、タイ、マレーシア、メキシコ、台湾、インドネシア、ベトナム。 |
松屋 | 14 | 2023年10月現在。松屋フーズHD ホームページの企業情報 - 松屋フーズの取り組み - 海外進出 - 海外店舗より。台湾、モンゴル、香港。 |
【まとめ】コロナ禍前を上回る売り上げで好調な牛丼業界だが・・・
売上高右肩上がり、利益もおおむね増加
牛丼3チェーン運営各社の、公開された業績発表(2024年2月期または3月期決算短信、2025年第1四半期報告)をみると、ほとんどが増収増益で、特に利益の回復・大幅増加が目立っています。
ゼンショーHDの「グローバルすき家」部門は売上・営業利益ともに前年同期比 2ケタの増加となっており、特に2024年3月期の営業利益は252.7%の大幅増となっています。松屋フーズの2024年3月期と2025年3月期第1四半期も、ともに2ケタ台の売上高増加、3ケタの利益増と、絶好調ともいえる数字が並んでいます(※)。
吉野家HDは、人件費を中心としたコスト上昇により2025年2月期第1四半期のセグメント利益(吉野家)のみ約35%のマイナスとなったものの、売上高は順調に増加しています。
※松屋フーズが手掛けるほかの業態ブランド(とんかつ、寿司、カレー等)を含む業績。
コロナ影響前・2019年決算の売上高と比べてみると・・・
さて、以上のような3社の好調業績は「コロナ禍の落ち込みを取り戻した」程度のものか、それともコロナ以前を上回る業績となっているのか。確認のため、影響を受ける以前の2019年(2・3月期)と2024年(2・3月期)の売上高を比較してみました。
まず、「松屋」の平成31年(2019年)3月期の売上高・981億58百万円と、令和6年(2024年)3月期の売上高・1,276億11百万円を比べると、30%と大きく増えています(※)。また「吉野家」も、2019年2月期の売上高・1,036億7百万円に対して 2024年2月期は1,264億60百万円となっており、22.1%の大幅増となっています。
「すき家」の場合は、ゼンショーHDが 2024年3月期の連結年度から報告セグメントを「牛丼カテゴリー」から「グローバルすき家」へと変更したことにより、ほか2社と同様の比較はできません。そこで、すき家の月次既存店売上高の対前年比(%)をさかのぼってみたところ、なんと2021年3月以降 43カ月連続で増加し続けています。特に2024年3月期の期間は毎月10~20%台と勢いのある増加率となっています。
※松屋フーズが手掛けるほかの業態ブランド(とんかつ、寿司、カレー等)を含む業績。
客足に陰りで、値下げキャンペーンも・・・
ただ、牛丼業界もまったくの順風満帆というわけではありません。すき家の2025年3月期上期(4~8月)の既存店客数をみると、前年同期比プラスではあるものの、増加率が約9%減少しており、増勢に衰えが見え始めています。
吉野家も、2024年度上期(3~8月)は前年同期に比べて既存店客数の増加率が3.4%減少。3月以降横ばいか わずかに増加しながら推移していたものの、直近・9月の客数は前年同月を5.2%下回り、局面の変化がうかがえる状況となっています。
そんな中、10月(2024年)に入り、期間限定で牛丼並盛が300円台になるキャンペーンを3社が相次いで実施し、「値下げ合戦か」と話題に。物価高で財布のひもが固くなる中、既存客をつなぎ止め、新規客を呼び込むのが狙いとみられています。
多くの飲食業種で国内の店舗数が減少または頭打ち傾向にある中、牛丼チェーンは、目下の好調業績を反映してか若干ながら店舗数が増加しています。人口減少にインフレ、原料高といった厳しい環境下、このまま「大手」の強みを活かし、収益力を保ちながらほかの飲食業種に対し優位に戦っていけるのか、今後の動向が気になるところです。
本記事は当社のチェーン店舗データをもとに作成しています
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