【2023年版】ファミリーレストランチェーンの店舗数ランキング

2023年9月11日 | 業界・地域分析

ファミレスのチキンステーキ

コロナ禍からの順調な回復傾向をみせながらも、最大手チェーンで大規模な店舗閉鎖計画が進められたファミリーレストラン業界。店舗数はどのような動きをみせているのでしょうか。
今回は、当社のチェーン店データを元に、ファミリーレストランチェーンの1年間(2022年7月~2023年7月)の店舗数推移やチェーン別ランキング、前年同月比増減状況などを集計しました。また、どのチェーンがどの地域に多く展開しているか、都道府県別の分布状況も探ってみました。


データの集計方法について


  • 集計元のチェーン店データは、チェーン店の公開情報を当社が調査・収集したものです。すべてのチェーン店を網羅したものではありません。また、実態とは異なる場合がありますのでご了承ください。
  • 2023年7月時点で、国内に10店舗以上展開しているチェーン店を集計の対象にしています。
  • 当社のチェーン店データ調査・収集は毎月を基本としていますが、隔月など定期収集のチェーンもあります。表・グラフの対象月に収集がなかったチェーンの場合、当月時点で最新のデータを記載しています。
  • 店舗数の増減率(%)は、2023年7月と2022年7月の対比で算出しています(小数点2位以下は四捨五入)。

【月別推移】ファミリーレストランチェーン店舗数
(チェーン全体、2022年7月~2023年7月)

↓3.2% ほぼすべての月で前月を下回って推移 減少幅もやや拡大


ファミリーレストランチェーン全体の店舗数推移(2022年7月~2023年7月)をみると、2023年6月が前月比プラスマイナスゼロだった以外は、すべての月で前月を下回っています。最も減少数が多かったのは年度末の2023年3月(81店舗減)で、中でも最大手「ガスト」は、この月だけで 30店舗減少しています。
この結果、2023年7月と2022年7月を比較した前年比では、3.2%の減少(210店舗減)となりました。2022年版(2021年7月~2022年7月)でも前年比は減少(1.8%減)していましたが、2023年版ではやや幅が拡がりました。


ファミリーレストラン店舗数推移

店舗数の増減率(前年同月比)

業種 2022年7月 2023年7月 増減率(%)
ファミリーレストラン 6,648 6,438 -3.2

【2023年版】ファミリーレストランチェーン 店舗数ランキング

減少が22チェーン、増加は3チェーンのみ


チェーン別店舗数ランキングを7月の前年同月比でみると、30チェーン中 増加したのは 3チェーンのみで、プラスマイナスゼロが 5チェーン、残り 22チェーンがマイナスとなっています。
増加した3チェーンは「ジョリーパスタ(3.0%・9店増)」「洋麺屋ピエトロ(2.6%・1店増)」「神戸元町ドリア(10.7%・3店増)」。専門色が濃い洋食店が顔を揃えています。

一方、減少チェーンのうち、ランキング上位 6チェーンは微減がほとんどであるため、最大手ガストの3.1%減が目立っています。また 9~20位では、「ステーキガスト(20.2%減)」「ビッグボーイ(15.0%減)」「ジョナサン(9.6%減)」と、減少率が高いチェーンが目に付きます。
今回の2023年版では、「チェーン規模にかかわらず 全体的にファミレス数が減少している」「和食系レストランで減少チェーンが多め(8チェーン)」といった傾向も表れています。

ちなみに、ランクインチェーンのうち、ガスト・バーミヤン・ジョナサン・夢庵・ステーキガスト を展開する「すかいらーくホールディングス」は、2022年8月に不採算店約100店舗を削減する方針を打ち出していました。当社データで上記ブランドの減少数合計を計算したところ、2022年7月から2023年7月の間に 94店舗減少していました。


チェーン別店舗数ランキング(上位30チェーン)

順位 チェーン名 2022年7月 2023年7月 増減率(%)
1位 ガスト 1,323 1,282 -3.1
2位 サイゼリヤ 1,074 1,056 -1.7
3位 ジョイフル 618 611 -1.1
4位 ココス 516 514 -0.4
5位 バーミヤン 356 352 -1.1
6位 デニーズ 320 317 -0.9
7位 ジョリーパスタ 305 314 +3.0
8位 ロイヤルホスト 218 218 0
9位 和食さと 207 197 -4.8
10位 ジョナサン 208 188 -9.6
11位 夢庵 174 167 -4.0
12位 ビッグボーイ 180 153 -15.0
13位 カプリチョーザ 96 95 -1.0
14位 和風レストランまるまつ 93 90 -3.2
15位 ステーキガスト 109 87 -20.2
16位 ポポラマーマ 90 82 -8.9
17位 レストラン庄屋 55 53 -3.6
18位 ばんどう太郎 49 47 -4.1
19位 トマト&オニオン 41 41 0
20位 藍屋 41 39 -4.9
20位 洋麺屋ピエトロ 38 39 +2.6
20位 不二家レストラン 39 39 0
23位 徳樹庵 38 38 0
24位 華屋与兵衛 36 35 -2.8
24位 ラケル 36 35 -2.8
26位 神戸元町ドリア 28 31 +10.7
27位 魚輝水産 32 30 -6.3
28位 ヴィクトリアステーション 29 28 -3.4
28位 おむらいす亭 31 28 -9.7
28位 青蓮 28 28 0

◎参考情報:

上位チェーンの2022年以前の店舗数 経年推移(2018~2022年、7月時点)が【2022年版】【年推移】チェーン別 店舗数 で確認できます。

ランキングは当社のチェーン店舗データをもとに作成しています


日本ソフト販売が提供する、全国のチェーン店舗データ(飲食店・コンビニ・ドラッグストアなど)についての詳しいサービス情報は、こちらからご覧いただけます。



【地域分布】各チェーンの都道府県別出店状況(上位10チェーン、2023年7月時点)

ガスト ~全国に分布するも、首都圏中心に東日本に比重~

当社データから都道府県別の出店状況(2023年7月現在)をみると、47都道府県すべてに店舗があり、最も多いのは東京都(202店)で、次いで神奈川県(147店)、埼玉県(103店)、千葉県(91店)、愛知県(90店)、の順で続いています。人口の多い大都市圏から順に多く分布し、特に首都圏の比重が高くなっています。
一方、店舗数が少ないのは、宮崎・高知(各4店)、鳥取(5店)、佐賀(6店)、石川(7店)など。西日本の比較的人口が少ない県が多くみられます。

ガストの運営会社は、すかいらーくホールディングス傘下の「株式会社すかいらーくレストランツ(東京都武蔵野市)」。
すかいらーくHDの2023年度第2四半期決算説明資料によると、2023年度上半期 実績では 既存店売上高が前年比 121.3%、客数 108.1%、客単価 112.2%、と需要は好調。2019年比でみると、売上高と客数がまだコロナ禍前の水準を下回っているものの、客単価は 112.0%と大きく上回っています。
また、同社の店舗戦略としては、1店1店の収益構造改革やDXによる生産性向上、厳選した駅前への新店出店、今期(2023年12月期)100店のリモデル実施、などの取り組みを進めています。


サイゼリヤ ~首都圏への集中度が高め~

都道府県別の出店状況をみると、2023年7月現在で 39都道府県に店舗があり、最多は東京都(202店)、次いで千葉と神奈川(各124店)、埼玉(94店)と首都圏への集中度が高くなっています。以降は、大阪(76店)、愛知(74店)、兵庫(47店)と、大都市圏が続いています。
一方、鳥取・島根・青森(各1店)、佐賀・香川(各2店)、岩手・秋田・山口(各3店)など、西日本の比較的人口が少ない県や東北地方は店舗が少なく、未出店地域は 四国3県と九州の4県、沖縄県、となっています。

運営会社は「株式会社サイゼリヤ(埼玉県)」。同社の2023年8月期 第3四半期(2022年9月1日~2023年8月31日)決算短信[連結]によると、国内の売上高は前年同期比18.6%増と順調に伸びているものの、食材・エネルギー価格上昇等の影響を受け、前年同期に引き続いての営業損失となっています。

ちなみに、同社は海外出店を積極的に進めており、第3四半期期末時点で中国や台湾、シンガポールに計483店舗を展開しています。当期におけるアジアの売上高は前年同期比32.8%増、営業利益も 62.4%増と好調です。


ジョイフル ~九州中心の展開 遠くは大都市圏でも少ない~

都道府県別の出店状況(2023年7月現在)をみると、37都道府県に展開しており、福岡県(97店)が最も多く、鹿児島(52店)、大分(48店)、熊本(45店)、山口・宮崎(各36店)、と続きます。大分市が本拠のチェーンだけに、多い順の10番目以内に九州全県が入っています。
一方、少ないのは福島県(1店)、東京・京都・大阪(各3店)など。未出店地域は、北海道と東北4県、神奈川・新潟・福井・山梨・長野 です。人口の多い少ないよりも、本拠地からの距離などほかの要素が進出の基準となっているようです。

運営会社は「株式会社 ジョイフル」。同社の2023年6月期 決算短信(連結)によると、売上高が 26.7%増と大きく増加、営業損益も黒字に転換するなど、本格的な回復をみせています。


ココス ~関東地方に比重 西日本は店舗少なめ~

2023年7月現在 すべての都道府県で展開しており、店舗数が多いのは 茨城(60店)、千葉(50店)、東京都(31店)、埼玉(29店)、栃木(22店)、の順。首都圏というより関東地方の比重が高く、郊外型の展開であることが窺える分布となっています。
店舗が少ないのは、大分・佐賀・島根・和歌山(各1店)、宮崎・長崎・香川・徳島・鳥取(各2店)など、西日本の県で占められています。

運営会社は「株式会社 ゼンショーホールディングス」傘下の「株式会社ココスジャパン(東京都品川区)」。ゼンショーグループの2023年3月期 決算短信(連結)によると、「レストランカテゴリー※」の売上高は、前年同期比30.7%増と大きく増加しています。


※ココスのほか ジョリーパスタ、ビッグボーイ、熟成焼肉いちばん、華屋与兵衛、オリーブの丘 等が含まれています。


バーミヤン ~関東都市部での展開が多く、西日本は少なめ~

当社のデータから都道府県別の出店状況をみると、東京都が最も多く(84店)、2番目以降は神奈川県(68店)、千葉(45店)、埼玉(40店)。茨城(14店)からガクンと少なくなり、愛知(13店)、山梨(11店)、と続きます。ココスと同じ関東中心の展開でも、こちらは都心店の多さを窺わせる分布となっています。
2023年7月時点で31都道府県に店舗があるものの、半分は3店以下の出店数に止まっています。また、未出店の地域は、東北・北陸で各2県ずつ、中国 3県、四国 2県、福岡県以外の九州と沖縄。東北、北陸、西日本での展開はまだ少ない、という状況です。

運営会社は、すかいらーくグループの「株式会社すかいらーくレストランツ」。同グループでは、2023年度上半期の売上拡大戦略の一環として「ファミリーダイニング事業のメニュー実験」を実施。バーミヤンでは「お得な麺セット」を導入した結果、セットメニューの販売数が1.7倍に増えた とのことです。


デニーズ ~関東・中部中心に展開 中国地方以西にはなし~

「デニーズ」の店舗数が多い地域は、東京都(97店)、神奈川県(55店)、千葉県(35店)、愛知県(33店)、埼玉県(26店)の順。2023年7月時点で 15都府県(東北 1県、関東 7都県、中部 5県、近畿 2府県)と、出店地域は限られています。
東北地方は関東寄りの福島県(12店)のみで他の東北地方と北海道にはなく、近畿も大阪(7店)と三重県(3店)に止まり、中国地方以西には展開がありません。

運営会社は、セブン&アイ・ホールディングス(HD)のグループ企業である「株式会社セブン&アイ・フードシステムズ(本部:東京都千代田)」。
同HDの2023年2月期 決算短信(連結)によると、レストラン事業については「前年の営業時間短縮や酒類提供制限からの反動、外食ニーズの回復等により既存店売上は改善傾向」としながらも営業損失となっています。


ジョリーパスタ ~42都道府県に展開 人口中規模以上に多く分布~

当社データから都道府県別の出店状況をみると、2023年7月時点で 42都道府県と広域に展開しており、最も多いのが大阪府(33店)で、次いで神奈川(28店)、兵庫(23店)、東京(22店)、福岡(20店)の順。以降も広島(17店)・千葉(16店)・静岡(14店)・埼玉(13店)・愛知(10店)と続いており、全国の人口中規模以上の都道府県を満遍なく押さえているような構成となっています。
一方、店舗が少ないのは 福島・群馬・鳥取・香川・長崎(各1店)などで、東北 3県(青森・秋田・山形)と四国 2県(徳島・高知)は未出店地域となっています。

運営会社は「株式会社ジョリーパスタ(東京都港区)」。ココスと同じゼンショーグループです。
ジョリーパスタのここ5年の経年データをみると 右肩上がりに店舗数を伸ばしていますが、2023年7月の前年同月比は3.0%増となり、ここへきて勢いにやや鈍化がみられます(参照:2022年版 【年推移】チェーン別 店舗数)。


ロイヤルホスト ~東京都への集中度が高め 四国には店舗なし~

都道府県別の出店状況をみると、2023年7月時点で 30都道府県に展開しています。最も多いのは東京都(52店)で、2番目が本拠地の福岡県(26店)。東京は福岡のちょうど2倍と突出しています。3番目は大阪(23店)で、以降 神奈川(21店)、埼玉(14店)、千葉(12店)、兵庫(11店)、と続きます。
一方、30都道府県のうち半分は3店舗以下の展開で、店舗のない地域は 四国(全県)や東北(4県)、北陸(3県)で目立っています。

運営会社は「ロイヤルホールディングス株式会社(福岡市) 」。同社の2023年12月期 第2四半期決算説明会資料によると、ロイヤルホストの既存店売上高は2022年10月以降、9カ月連続でコロナ禍前2019年の水準を上回っており、好調に推移しています。


和食さと ~近畿圏と大都市圏中心に展開~

当社データから都道府県別の出店状況をみると、15の都府県に店舗があり、本拠地の大阪府(44店)が最も多く、2番目が愛知(28店)、兵庫(26店)、京都(20店)、東京(15店)、三重(12店)、奈良(10店)の順となっています。本拠地周辺の府県と大都市がある都県を中心に展開しています。
一方、栃木・群馬以東と中国地方以西、北陸、山梨県、長野県 は未出店地域となっています。

運営会社は「サトフードサービス株式会社(大阪市)」。「SRSホールディングス(HD)株式会社」がグループを束ねています。同HDの令和5年3月期決算短信(連結)によると、期間中(令和4年4月1日~令和5年3月31日)における和食さとの売上高は、前年同月比36.0%増と大きく回復しました。また、2023年4~7月の月次業績の推移をみても、既存店売上高、客数、客単価ともに順調に伸びています。


ジョナサン ~東京都と神奈川県で店舗数全体の約73%を占める~

「ジョナサン」は、東京・神奈川・埼玉・千葉・静岡・茨城・山梨 の計 7 都県で店舗を展開しています。最も多いのは東京都(84店)で、2番目が神奈川県(53店)、埼玉(25店)、千葉(15店)と続きます。東京都と神奈川県で全体の約73%を占めており、静岡は7店、茨城・山梨は各2店に止まっています。

運営会社は、すかいらーくグループの「株式会社すかいらーくレストランツ」。すかいらーくHD全体の業績はガストの項で触れたとおりです。ジョナサンに関する記述は同HDの決算短信や決算説明会資料をみてもほとんどなく、詳細はわかりません。
当社の経年データの推移をみる限り、ジョナサンの店舗数はここ5年で年々減少しています(参照:2022年版 【年推移】チェーン別 店舗数)。


【まとめ】売上高は2年連続で回復も、ファミレス減少に歯止めは掛からず

コロナ禍からの本格的な回復により、ファミリーレストランの売上高や客数、客単価の対前年比は、ほとんどのチェーンで増加しています。チェーン毎に「前年比プラス」か「コロナ禍前に比べてもプラス」かといった違いはみられるものの、公開されている数字を見る限り外食需要の回復はより鮮明になっています。
しかし、こうした回復基調の中にあっても、店舗数減少に歯止めがかからないのがファミリーレストランの現状です。

不採算店の退店と並び、店舗減少の大きな要因として考えられるのが、他業態や新業態の店舗に転換する動きです。以前からグループ内や運営会社内で業態の転換・再編は当たり前のように進められていましたが、近年ファミリーレストランはもっぱら「業態転換される対象」になっているのかもしれません。

とはいえ、2022年から続くコロナ禍からの回復を経て、2023年度はいよいよ新規出店に打って出る機運も出始めています。
ロイヤルHDでは、直営としては4年ぶりにロイヤルホストの新規出店を再開(ロイヤルホスト光が丘IMA店:2023年4月25日開店)。また、2022年夏に100店舗の閉鎖を発表したすかいらーくHDも、「既存店の収益構造改革による黒字化の目途がたった」ことから新規出店を再開しており、2023年は優良立地を厳選した50店舗の出店を計画しています。

こうして一部で芽生えた新規出店の動きがファミリーレストランチェーン全体に拡がっていくのか、それとも業態としての「ファミリーレストラン」は縮小傾向をたどっていくのか。今後の動向が気になるところです。


本記事は当社のチェーン店舗データをもとに作成しています


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