【2022年版】ファミリーレストランチェーンの店舗数ランキング
2022年10月3日 | 業界・地域分析
コロナ禍による落ち込みの反動から、2022年の売上高は全般的に前年同月比増の回復傾向をみせているファミリーレストラン業界。そんなファミレスチェーンの国内店舗数は、どのような動きをみせているのでしょうか。
今回は、当社のチェーン店データを元に、ファミリーレストランチェーンの2021年7月~2022年7月の店舗数推移やチェーン別ランキング、前年同月比増減状況などを集計しました。また、2018~2022年の店舗数年推移をチェーン別に比較することにより、ここ4年間の業界動向を探ってみます。
データの集計方法について
- 集計元のチェーン店データは、チェーン店の公開情報を当社が調査・収集したものです。すべてのチェーン店を網羅したものではありません。また、実態とは異なる場合がありますのでご了承ください。
- 2022年7月時点で、国内に10店舗以上展開しているチェーン店を集計の対象にしています。
- 当社のチェーン店データ調査・収集は毎月を基本としていますが、隔月など定期収集のチェーンもあります。表・グラフの対象月に収集がなかったチェーンの場合、当月時点で最新のデータを記載しています。
- 店舗数の増減率(%)は、2022年7月と2021年7月の対比で算出しています(小数点3位以下は四捨五入)。
目次
- 【月別推移】ファミリーレストランチェーン店舗数(全体、2021年7月~2022年7月)
- 【2022年版】ファミリーレストランチェーン 店舗数ランキング(上位30)
- 【年推移】チェーン別 店舗数(2018~2022年7月時点、100店舗以上のチェーン対象)
- 【まとめ】売り上げは尻上がりに回復も、当面は業態再編や不採算店の退店が続くか
・[すかいらーくグループ]
ガスト、
バーミヤン、
ジョナサン、
夢庵、
ステーキガスト
・[ゼンショーグループ]
ココス、
ジョリーパスタ、
ビッグボーイ
・サイゼリヤ
・ジョイフル
・デニーズ
・ロイヤルホスト
・和食さと
【月別推移】ファミリーレストランチェーン店舗数
(全体、2021年7月~2022年7月)
↓1.8% 1年を通し、前月を少しずつ下回る状態が続く
ファミリーレストランチェーン全体の店舗数推移(2021年7月~2022年7月)をみると、1年を通してなだらかな下降線を描いています。2021年11→12月は4店とわずかに増加していますが、そのほかの月は2~22店の幅で前月を少しずつ下回る状態が続いています。この結果、2022年7月と前年7月を比較した前年同月比では、1.8%の減少となりました。
店舗数の前年同月比増減率
業種 | 2021年7月 | 2022年7月 | 増減率(%) |
---|---|---|---|
ファミリーレストラン | 6,770 | 6,648 | -1.8 |
【2022年版】ファミリーレストランチェーン 店舗数ランキング(上位30)
30チェーン中、前年同月比増加はわずか5チェーン
チェーン別店舗数ランキングを7月の前年同月比でみると、1位「ガスト(0.75%減)」をはじめ、2位「サイゼリヤ(1.56減)」、3位「ジョイフル(2.06減)」、4位「ココス(3.19%減)」と軒並み減少しており、順位につれて減少幅が微妙に広がっています。
店舗数が増加している上位チェーンとしては、5位「バーミヤン(5.01%増)」と7位「ジョリーパスタ(4.1%増)」の健闘が光ります。
ランキング30チェーン中、前年同月比増加はわずか5チェーンに止まり、2桁台の高い伸びを示しているのは26位の「魚輝水産(18.52%増)」のみ。店舗数がプラスマイナスゼロの現状維持も8チェーンと多く、ファミレス業界全体が出店投資を控える守勢に入っている状況が窺えます。
チェーン別 店舗数ランキング
順位 | チェーン名 | 2021年7月 | 2022年7月 | 増減率(%) |
---|---|---|---|---|
1位 | ガスト | 1,333 | 1.323 | -0.75 |
2位 | サイゼリヤ | 1,091 | 1,074 | -1.56 |
3位 | ジョイフル | 631 | 618 | -2.06 |
4位 | ココス | 533 | 516 | -3.19 |
5位 | バーミヤン | 339 | 356 | +5.01 |
6位 | デニーズ | 331 | 320 | -3.32 |
7位 | ジョリーパスタ | 293 | 305 | +4.10 |
8位 | ロイヤルホスト | 218 | 218 | 0 |
9位 | ジョナサン | 220 | 208 | -5.45 |
10位 | 和食さと | 207 | 207 | 0 |
11位 | ビッグボーイ | 208 | 180 | -13.46 |
12位 | 夢庵 | 174 | 174 | 0 |
13位 | ステーキガスト | 124 | 109 | -12.10 |
14位 | カプリチョーザ | 93 | 96 | +3.23 |
15位 | 和風レストランまるまつ | 93 | 93 | 0 |
16位 | ポポラマーマ | 92 | 90 | -2.17 |
17位 | レストラン庄屋 | 55 | 55 | 0 |
18位 | ばんどう太郎 | 47 | 49 | +4.26 |
19位 | 藍屋 | 45 | 41 | -8.89 |
19位 | トマト&オニオン | 43 | 41 | -4.65 |
21位 | 不二家 | 43 | 39 | -9.30 |
22位 | 徳樹庵 | 38 | 38 | 0 |
22位 | 洋麺屋ピエトロ | 38 | 38 | 0 |
24位 | 華屋与兵衛 | 42 | 36 | -14.29 |
24位 | ラケル | 38 | 36 | -5.26 |
26位 | 魚輝水産 | 27 | 32 | +18.52 |
27位 | おむらいす亭 | 35 | 31 | -11.43 |
27位 | 和食れすとらん 天狗 | 31 | 31 | 0 |
29位 | がんこ | 34 | 30 | -11.76 |
30位 | グラッチェガーデンズ | 31 | 29 | -6.45 |
ランキングは当社のチェーン店舗データをもとに作成しています
日本ソフト販売が提供する、全国のチェーン店舗データ(飲食店・コンビニ・ドラッグストアなど)についての詳しいサービス情報は、こちらからご覧いただけます。
【年推移】チェーン別 店舗数
(2018~2022年7月時点、100店舗以上のチェーン対象)
[すかいらーくグループ] ガスト、バーミヤン、ジョナサン、夢庵、ステーキガスト ~「バーミヤン」のみ増加傾向~
100店舗以上を展開する13チェーンのうち「ガスト」「バーミヤン」「ジョナサン」「夢庵」「ステーキガスト」は、「株式会社すかいらーくホールディングス」傘下のチェーンです。
このうち、年推移で増加傾向を示しているのは中華料理の「バーミヤン」。2020年から7、1、17店と店舗数を増やし、2022年は2018年と比べ7.6%増加しています。
一方、「ガスト」の年推移は、22、2、11、10店と少しずつ前年を下回り、2022年は4年前から3.3%減となっています。また、「ジョナサン」の減少幅はグループの中で最も大きく、2022年は対2018年比で約3割減となっています。「夢庵」は4年前と比べ約10%、「ステーキガスト」も約22%の店舗数を減らしています。これら4チェーンの合計では、4年間で180店超の減少となっています。
すかいらーくグループのIRレポート(2022年9月2日開示)をみると、既存店売上高(2022年1~8月累計)の前年同期比は、113.7%。特に5月以降の増加幅が大きく、明るい兆しが見えています。ただ、対2019年同期比では77.4%であるため、コロナ禍前の水準には及ばず、回復の途に就いたとまでは言い切れないのが現状です。
同グループでは2022年8月に「ガスト」を中心に不採算店約100店舗を削減する方針を打ち出しており、当面はまだ統廃合による店舗網の調整・立て直しが続きそうです。
[ゼンショーグループ] ココス、ジョリーパスタ、ビッグボーイ
~「ジョリーパスタ」のみ大幅増~
100店舗以上を展開するチェーンのうち「ココス」「ジョリーパスタ」「ビッグボーイ」は、「株式会社 ゼンショーホールディングス」の傘下です。
このうち、7、22、23、12店と毎年順調に店舗数を伸ばしているのはパスタ専門店の「ジョリーパスタ」。結果、2022年は2018年比で26.6%の大幅増となり、店舗数ランキングも9位から7位に上がっています。
一方、店舗数ランキング4位の「ココス」は、2020年以降前年の店舗数を割り込んでいます。2021年の減少数(46店)が特に大きく、2022年と2018年の対比では約11%減となりました。また、「ビッグボーイ」は、特に2021年(52店)と2022年(28店)が大きく減少。結果、100店舗以上の13チェーンで最も大きな減少率(4年間で約33%減)となっています。
ゼンショーホールディングスの決算短信(連結)の添付資料によると、2022年3月期のレストランカテゴリー既存店売上高は前年比102.8%と前年をやや上回っています。また、2023年3月期第1四半期(2022年4月1日~6月30日)では、130.5%増とさらに確かな回復傾向を示しています。
とはいえ、上記のとおり同じグループの同じカテゴリー内でも増・減で対照的な推移をみせるチェーンがあり、それが「パスタかハンバーグ・ステーキか」という業態の違いによるものなのか、あるいはほかの理由があるのか、気になるところです。
サイゼリヤ ~店舗数は4年前と変わらず~
6、5、6店と2021年7月までは前年より少しずつ店舗数が増えていましたが、2022年7月は17店の減少となっています。その結果、2022年と2018年の対比ではプラスマイナスゼロの同数に収まりました。
同社の2022年8月期 第3四半期(2021年9月1日~2022年5月31日)の決算短信(連結)によると、売上高が前年同期比で12.6%増加し、本業での利益をあらわす営業利益はプラスに転じています。経常利益と純利益も、それぞれ285.8%増、380.4%増と大幅増加しており、回復が窺える結果となりました。
同社の場合、国内よりも海外での出店(中国など)を近年加速させていているようです。店舗数全体に占める海外店舗の比率は30.7%に達しており(2022年8月期第2四半期期末時点)、業績への寄与・影響も大きくなっています。
ジョイフル ~4年間で20%を超える減少~
大分市に本社を置くジョイフルのここ4年の店舗数は、9、16、130、13店とすべて前年同月を下回って推移しています。特に2021年は一気に130店減っており、その結果2022年は2018年に比べて21.4%減となりました。
同社の2022年6月期決算短信(連結)によると、売上高は前年比2.2%減で、経常利益や当期純利益は大幅増ながら、営業利益はマイナスが続いています。売上高の減少幅は前期に比べてだいぶ縮まったものの、依然厳しい状況です。とはいえ、来期(2023年6月期)は感染状況の改善を見込み、増収増益の業績予測を立てています。
デニーズ ~4年間で約14%の減少~
4年間の推移をみると、2020年7月のみ6店舗増加したものの、あとは前年を下回っています。特に2021年の減少数が43店舗と最も大きく、2022年と2018年の対比では14.2%のマイナスとなりました。
デニーズは「デニーズジャパン」が経営していましたが、2007年3月「株式会社セブン&アイ・フードシステムズ」の100%子会社となり、半年後に吸収合併されています。
セブン&アイ・ホールディングスの「月次営業情報」によると、セブン&アイ・フードシステムズ(デニーズ)の既存店売上高は2022年3~8月まですべて前年同月を上回っており、特に5月以降は120%を超える水準で推移しています。客数も同様に増加しており、着実な回復ぶりが窺えます。
ロイヤルホスト ~店舗の増減は極めて小幅~
同チェーンの4年間の店舗数は、2店増、1店増、2店減、プラスマイナスゼロと、増減が小さく、堅実な動きに推移しています。このため、2022年と2018年の対比では0.5%の微増となりました。
ロイヤルホールディングスの2022年12月期 第2四半期(2022年1月1日~6月30日)決算説明資料によると、ロイヤルホストの既存店売上高は前年同期に比べて28億4,400万円増加し、9億9,500万円の経常利益を計上。2019年対比の既存店売上高でも、5月が105%、6月・98.7%とコロナ前の水準におおむね達しており、尻上がりに順調な回復ぶりが目立ってきています。
和食さと ~前年を下回ることなく堅調に推移~
1、2、2、0、と、少数ながら前年を下回ることなく推移しています。100店舗以上を展開するチェーンで4年間全く前年を下回ることがなかったのは、「バーミヤン」「ジョリーパスタ」と、「和食さと」です。
グループ親会社・SRSホールディングスの「月次報告」によると、「和食さと」の2022年4~8月の既存店売上高・月次前年比は、140~160%の高水準が続いています(7月は119.6%)。客数も同様の水準で増えています。
同社は「和食さと」の他にも「家族亭」など計7ブランドを展開していますが、最大の特徴はグループ全体で「和食に特化」している点です。
【まとめ】売り上げは尻上がりに回復も、当面は業態再編や不採算店の退店が続くか
ファミリーレストラン各社の業績関連の資料をみると、多くのチェーンで特に2022年度に入ってからの回復傾向が著しいものの、依然としてコロナ禍前2019年の水準には届いていないチェーンがほとんどです。
また、2021~2022年中を期間とする決算短信の添付資料などをみると、損益の縮小や利益増加の理由の一つとして、時短営業協力金や雇用調整助成金等の支援金を収益に計上したことを挙げているチェーンが多く、今のところ純粋に「需要が回復したから収益が改善した」とばかりはいえないのが実情です。
業績が厳しくなれば、社内やグループ内で業態再編や不採算店の退店が進み、店舗数が減るのは当然の流れ。ランキング30チェーンのうち、対前年比で店舗数が減少しているチェーンが過半数の17にのぼり、横ばいが8社、増加は5チェーンに止まっています。
また、店舗数の増減状況を見る限り、総合的メニューのファミリーレストランよりも「パスタ」や「中華料理」「イタリアン」「和食」など、より専門化したチェーンで店舗数が増加したり、堅調な推移をみせていることがわかります。「専門に特化した業態の方が従来のファミレスより強い」とまでは言い切れませんが、少なくともコロナ不況下では影響を小さくすることができたのではないか、と考えられます。
コロナ収束への道筋はまだ不透明ながら、世の中はウィズコロナで行動制限をしない日常が定着しつつあります。原材料費や物流コストの高騰などの影響が広がる中、足元の回復傾向を本格的な業績回復へとつなげることができるのか、ファミリーレストラン業界の今後の動きに注目したいところです。
本記事は当社のチェーン店舗データをもとに作成しています
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